故人から相続を受ける場合、様々な手続きを経なければなりません。
最長では3年近くかかるケースもあり、対応すべき内容も非常に多岐にわたる特徴があります。
では、具体的に相続手続きにおいてどのようなことを実施しなければならないのでしょうか。
この記事では、相続手続きでやるべきことや流れをチェックリストで解説します。
相続の流れをチェックリストで説明
相続をおこなうにあたり、それぞれの対応必要事項に対して、期日の早い順番から順序だてて対応することが重要です。
また、同じ期日で複数の手続きを完了させなければならない項目も多い点に注意が必要です。
チェック | 期日 | 手続き内容 | 対象となる人 | 手続き先 |
⬜ | 相続発生後(死亡後)すぐ | 死亡診断書の取得 (事故の場合は死体検案書) |
すべての人 | 病院 (事故の場合は警察) |
⬜ | 7日以内 | 死亡届を提出し火葬許可を申請する | すべての人 | 市区町村役場 |
⬜ | 火葬のとき | 埋葬許可証を受け取る | すべての人 | 火葬場 |
⬜ | 死亡後できるだけ早く | 退職手続きする | 故人が勤めていた場合 | 勤務先 |
⬜ | 14日以内 | 世帯主変更届を提出する | 故人が世帯主の場合 | 市区町村役場 |
⬜ | 14日以内 | 健康保険・介護保険の資格喪失届を提出する | すべての人 | 市区町村役場 (被用者保険は勤務先・健康保険組合) |
⬜ | 葬儀終了後速やかに | 電気・ガス・水道などのインフラ契約を変更・解約する | 必要に応じて | 電気・ガス・水道事業者など |
⬜ | 葬儀終了後速やかに | NHKなどの有料サービスの契約を変更・解約する | 必要に応じて | NHKなど |
⬜ | 葬儀終了後速やかに | クレジットカードを解約する | 必要に応じて | カード会社 |
⬜ | 葬儀終了後速やかに | 運転免許証やパスポートなどを返納する | 必要に応じて | 警察署・パスポートセンターなど |
⬜ | 葬儀終了後速やかに | 年金の受給を止める | 故人が年金をもらっていた場合 | 年金事務所・街角の年金相談センター |
⬜ | 葬儀終了後速やかに | 固定資産税や住民税の請求先を変更する | 必要に応じて | 市区町村役場 |
⬜ | 葬儀終了後落ち着いたタイミング | 相続人と相続財産を調査する | すべての人 | (届出先なし) |
⬜ | 葬儀終了後落ち着いたタイミング | 遺言書の検認手続きをする | 遺言書があれば | 家庭裁判所 |
⬜ | 3か月以内 | 相続放棄や限定承認の申し立てをする | 必要に応じて | 家庭裁判所 |
⬜ | 4か月以内 | 所得税の準確定申告をする | 必要に応じて | 税務署 |
⬜ | 4か月以内 | 青色申告を引き継ぐ | 必要に応じて | 税務署 |
⬜ | 生活が落ち着いたら | 遺産分割協議で遺産の分配方法を決定する | 遺言書がなければ | (届出先なし) |
⬜ | 遺産分割協議がまとまり次第 | 銀行や証券口座の名義変更・解約をおこなう | 必要に応じて | 銀行・証券会社 |
⬜ | 遺産分割協議がまとまり次第 | 死亡保険金を受け取る | 故人が保険に加入していた場合 | 保険会社 |
⬜ | 遺産分割協議がまとまり次第 | 不動産の名義変更をおこなう | 必要に応じて | 法務局 |
⬜ | 遺産分割協議がまとまり次第 | 自動車の名義変更をおこなう | 必要に応じて | 運輸支局など |
⬜ | 10か月以内 | 相続税を申告する | 必要に応じて | 税務署 |
⬜ | 1年以内 | 遺留分侵害額請求をする | 必要に応じて | 他の相続人など |
⬜ | 2年以内 | 葬祭費や埋葬料などをもらう | 条件に該当する場合 | 市区町村役場または健保組合 |
⬜ | 2年以内 | 高額療養費を申請する | 条件に該当する場合 | 市区町村役場または健保組合 |
⬜ | 2年以内 | 死亡一時金を受け取る | 条件に該当する場合 | 市区町村役場または年金事務所 |
⬜ | 5年以内 | 未支給年金を受け取る | 未支給の年金がある場合 | 年金事務所 |
⬜ | 5年以内 | 遺族年金・寡婦年金を受け取る | 条件に該当する場合 | 市区町村役場または年金事務所 |
以上のように、内容は多岐にわたり、最長で5年程度かかるものもあります。
よって、チェックシートを活用して漏れなく対応することが望まれます。
家族が死亡したあとに行う手続き
家族が死亡したあとにおこなう手続きとしては、7日以内に完了するものから、3年以内に対応しなければならないものまで、多種多様です。
ここでは、各タイミング別の具体的な手続き内容について解説します。
7日以内に行うこと
7日以内におこなうものとして、葬儀の準備があります。
葬儀をとりおこなうにあたり、葬儀会社との間で打ち合わせの上で決定することになります。
葬儀だけでなく初七日についても相談が必要であり、正確には死亡後すぐに対応しなければなりません。
また、死亡後すぐに対応しなければならない手続きとしては、以下のようなものがあります。
- 健康保険証の返還
- 厚生年金の手続き
- 国民年金加入状況変更の手続き
- 健康保険の変更・加入
もし、手続が遅れてしまうと不正受給を疑われる場合もあるため、早急に対応してください。
さらに、7日以内に実施が必要となる手続きとしては、以下があります。
- 死亡届の提出
- 埋火葬許可証交付申請
死亡届を提出する場合、医師が作成した死亡診断書や届出人の印鑑などの準備が必要です。
また、本籍地または死亡した場所、届出人の住所地の役所などに書類を提出しなければなりませんので注意してください。
さらに、届出人が法律上で決まっており、同居の親族、その他の同居者、家主などの優先順位で定められた方が提出する必要があります。
埋火葬許可証交付申請とは、葬儀を執りおこなった後に火葬して埋葬する際に必要となる書類です。
役所によっては、火葬許可証や埋火葬許可証などの名称で呼ばれていますが、火葬する際には許可証を提出して火葬済の証明を受け取らなければなりません。
埋火葬許可証の交付申請は、7日以内に死亡届を提出した役所に届け出てください。
14日以内に行うこと
死後14日以内というと、ある程度落ち着いてきて一息入れたいタイミングですが、多くの手続きが待っている状況です。
10日以内におこなわなければならない手続きには、以下があります。
- 年金受給権者死亡届(厚生年金受給者の場合)
- 加給年金額対象者不該当届
年金受給権者死亡届とは、年金を受けている方が亡くなった場合に、年金を受け取る権利を消滅させるための申請となります。
なお、日本年金機構に対してマイナンバーを提供している場合、原則として年金受給権者死亡届を省略可能です。
加給年金額対象者不該当届とは、加給年金額や加算額の対象となっている方が亡くなった場合に提出が必要となる書類です。
次に、14日以内に書類の提出が必要となる項目として、以下が挙げられます。
- 世帯主変更届
- 介護保険資格喪失届
- 老人医療受給者の手続き
- 特定疾患医療受給者の手続き
- 身体障害受給者の手続き
- 児童手当の手続きなど
世帯主変更届とは、住民票原本に記載されている世帯主が、死亡や転出等で居なくなった場合に届出が必要な書類です。
特別な様式があるわけではなく、実際には住民異動届の申請書様式を提出するケースが多いです。
世帯主変更届を届出できるのは、新たに世帯主になる本人もしくは同一世帯の世帯員となり、居住地の市区町村の役所に届け出てください。
また、14日以内に介護保険資格喪失届など、各種手当などを受給している場合は廃止などの届出が必要です。
そのほか、正確な期限は定められていないものの、以下は14日以内におこなうとよいでしょう。
- 電気・ガス・水道などのインフラ関連の契約者名義変更
- 新聞、インターネットの名義変更又は解約
- 携帯電話の解約
- クレジットカードの解約
- 運転免許証の返納
- パスポートの返納
1カ月以内に行うこと
1か月以内に手続しなければならない項目として、雇用保険受給資格者証の返還が挙げられます。
雇用保険受給資格者証とは、失業手当を受給できる資格を証明するものとなります。
故人が雇用保険を受給しているケースでは、死亡してから1カ月以内に故人が雇用保険を受給していたハローワークに受給資格者証を返還しなければなりません。
ほかにも、1か月以内に以下の手続きが必要となるケースがあります。
- 寡婦年金の請求
- 中高年寡婦加算の請求
寡婦年金とは、夫をなくした妻が60歳から65歳の間に限定して支給される年金のことです。
妻自身の年金は65歳から支給されることになるため、より早く年金を受給できる形です。
寡婦年金の請求は、住所地の役所に届けなければなりません。
中高年寡婦加算の請求も似たような制度となり、基本的に住所地の役所に届け出する必要があります。
3カ月以内に行うこと
死亡後3カ月以内におこなうこととして、遺産がマイナスのものばかりの場合、相続放棄を検討する必要があります。
相続放棄とは、その名のとおり相続を放棄する行為のことで、マイナスの遺産ばかりの場合に使用する手段です。
相続放棄する場合、自己のために相続の開始があったことを知ったタイミングから3ヶ月以内に手続きする必要があります。
自己のために相続の開始があったことを知ったタイミングとは、具体的には被相続人が亡くなったことを知ったタイミングとなり、死亡して3か月以内に対応しなければなりません。
相続放棄をおこなうためには、以下のような書類が必要となるため、漏れなく準備する必要があります。
- 故人の住民除票もしくは戸籍附票
- 申述人(相続放棄を申し立てする人)の戸籍謄本
- 相続放棄の申述書
- 収入印紙
- 切手
書類の準備が完了したら、故人が最後に住んでいた住所を管轄する家庭裁判所に提出してください。
その後、家庭裁判所から照会書が送付され、必要事項を回答して返信します。
そして、遺産の相続放棄が認められる場合、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届けば手続きは完了です。
4カ月以内に行うこと
4カ月以内に行うこととして、準確定申告が挙げられます。
相続が発生した年において確定申告書の提出義務のある方が亡くなられたケースでは、相続人は所得税の確定申告が必要です。
さらに、消費税の申告が必要な方の場合は、相続の発生があったことを知った日の翌日より4ヵ月以内に申告しなければなりません。
準確定申告は、以下のようなケースで必要となります。
- 被相続人が事業を営んで確定申告していたケース
- 被相続人に副収入を得ており確定申告義務があるケース
- 被相続人の給与額が2000万円以上となり確定申告義務があるケース
- 被相続人が確定申告によって還付金を受けられるケース
必ずしも、納税のために必要になるわけではなく、還付金を得るために必要になる場合もあるため注意してください。
また、4カ月を超過してしまうと延滞税が発生する点にも注意が必要です。
10カ月以内に行うこと
10カ月以内におこなうこととして、相続税の申告と納税への対応が必要です。
相続税は、平成27年1月1日以降に死亡された方から基礎控除額が下がったため、実質的な増税となっています。
これにより、相続税の申告と納税が不要な方の場合でも、相続税が課税されるケースが増えているのです。
相続税については、相続財産の総額から基礎控除額を控除し、課税遺産総額を算出して税額を計算します。
よって、相続遺産の総額が基礎控除額以下の場合は、相続税は課税されず申告も不要です。
なお、小規模宅地等についての相続税の課税価格の特例を適用した結果は、基礎控除額以下であっても申告が必要です。
また、遺産分割協議が終わっていないケースでは、一旦法定相続分で遺産を取得したという内容で申告、納税してください。
1年以内に行うこと
死亡後1年以内に対応すべき項目として、遺留分侵害額請求があります。
遺産相続においては、法定相続よりも遺言による相続が優先されるという大原則がありますが、遺言に従うと被相続人の配偶者や子が法定相続人としての権利と利益を侵されてしまうケースがあるのです。
そこで、民法においては法定相続人が相続可能な最低限度の相続分を、遺留分としているのです。
遺留分を主張する場合、遺留分を侵害している方に対して自分の取り分を請求する必要があります。
この遺留分の請求手続きのことを、遺留分侵害額請求と呼びます。
遺留分侵害額請求は、相続開始と遺留分侵害の事実を知った日より1年以内に請求しなければなりません。
もし、1年を超えてしまうと遺留分を請求できなくなるため注意してください。
遺留分侵害額請求は、具体的に以下の方法でおこなわれます。
- 相続人間で話し合う
- 内容証明郵便を送付する
- 遺留分侵害額の請求調停
- 遺留分侵害額請求訴訟
3年以内に行うこと
死亡して2年以内に必要となる手続きとして、死亡一時金の受取請求がありあす。
死亡一時金とは、一定の条件を満たした遺族が受給できる年金のことです。
死亡一時金の場合、死亡日の前日において第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上あるケースにおいて、老齢基礎年金や障害基礎年金を受けないまま亡くなった際に、その人と生計を同じくしていた遺族に支給されます。
この場合の遺族とは、以下の中で優先順位の高い人が該当します。
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
兄弟姉妹の中で、死亡一時金を受ける権利の時効は死亡日の翌日から2年に設定されています。
もし、2年を過ぎてしまうと時効となり、受け取ることができなくなるため注意してください。
次に、3年以内に手続きが必要となるものとして、死亡保険金の受取請求があります。
生命保険の死亡保険金の受取請求を行う手順としては、はじめに保険契約者または保険金受取人が、生命保険会社に連絡を入れます。
その後、生命保険会社より必要書類の案内と請求書が送付されるので、受け取り以下の書類を準備・作成してください。
- 請求書
- 被保険者の住民票
- 受取人の戸籍抄本
- 受取人の印鑑証明
- 医師の死亡診断書または死体検案書
- 保険証券
そして、保険証券に記載されている保険金受取人が請求手続きを取り、生命保険会社による書類受付・支払可否の判断がおこなわれ、支給が決定します。
なお、亡くなった日の翌日から3年以内に加入している保険会社に連絡する必要があるため、忘れずに対応してください。
まとめ
人が亡くなった後に、今回のように様々な手続きを長期間にわたって対応する必要があります。
特に、保険金の請求手続きなど大きな金額となる手続きは、期限内に確実に実施することが重要です。
今回紹介したチェックシートなどを活用して、漏れなく確実に実施してください。
日本終活セレモニーでは、葬儀や相続などに関する有益な情報を、余すところなく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。